INDEX La Vie en Rose

chocolat ou moi ?

 バレンタインの日の夜。
 晩ごはんを食べて片付けをしてから、キッチンの隅に置いておいた小さなショップバッグを取って、ソファに座ってテレビを見ていた直人さんに聞いてみた。
「直人さんって、チョコレート好き?」
 苦手と言われたところで、もうチョコレートは買ってしまってるんだけど。
 小さくてとってもかわいいチョコレートの詰め合わせは、普段は日本にお店がない海外のお菓子メーカーの物。
 普段はチョコやトリュフの詰め合わせなんて自分では買わないし買えないけど、この時期は特別だと思う。
 もちろん、三分の二くらいは私が食べるものだと勝手に考えて選んだ。
 チョコレートは大好きだから、もっと食べられたら食べたいかも。
 そんなふうに考えていたから、
「まあまあ、嫌いじゃないかな」
 そんなちょっと意外な返事にちょっと驚く。
「え、そうなんだ」
「そりゃあ、ナナほど甘いもの大好きってわけではないけど」
 それならチョコレートケーキを買えばよかったかな……食べたいなと思いつつ、ケーキは残ったら困るしと思って買わなかったのに。
 そんなふうに考えながら、直人さんの隣に座る。
「何か困ることでも?」
「え、や、困らないけど」
「ナナの食べる分は残してあげるよ」
 彼は、私の考えてることなんてお見通しとでも言うような顔をして笑った。
「……いや、直人さんがたくさん食べるなら、それはそれでいいんだけど」
「一人で買い物って行ったのはそれか」
 と、私の手にある袋を見て笑う。
「あ、うん、まあね」
 だって、私も食べたいと言っても一応プレゼントだから、一緒に買いにいくのもちょっとなって思って。
 仕事のあと、買い物に寄るからと言って、直人さんには先に帰ってもらった。
 そういえば、一人で買い物っていうのも、彼と一緒に暮らすようになってからはちょっと久しぶりだったかも。
「……はい、バレンタインのチョコ。一緒に食べよう?」
 私は手に持っていた袋から、ラッピングされた箱を取り出して彼に差し出した。
「『一緒に食べよう』でもいいんだけど、何か他に言うことあるんじゃない?」
「……え?」
 彼の顔を見上げたら、どう見てもニヤニヤしてるように見える。
 その顔を見たら、彼が私に言わせたいことが何か、すぐにわかった。
 でも、自分から改めてそういうことを言うのは、恥ずかしいというか照れくさいというか……すごく、言いにくい。
 できれば、言わないでいてもわかってほしいところなんだけど。
「言わなきゃだめ?」
「そういう日でしょ?」
 そうなんだろうか……。
「………好き、ですよ」
「……すっごい言わされてる感じがあるんだけど」
「き、気のせい気のせい」
 これ以上どうしようもないってば。
 チョコレートの箱を彼の手に押し付けるように渡すと、そんなでも彼は満足そうに笑って受け取る。
「ま、そういうところもかわいいけど」
「そういうことにしといて」
「チョコもいいけど、こっちを先にいただいてもいいかな?」
 と、彼は私を抱き寄せた。
「え……ええ?」
 結局やっぱり、そういうことになるのかな……?


END

web拍手です。良かったら感想などお聞かせくださいね。

2012.02.14. up.
昔書いた話に似てる気がする(´・ω・`)
相変わらずすぎてすいません。

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