Man and Woman

夜明けは沈黙の中へ

03. epilogue

 外は雨が降っている。
 ベッドの中の私の耳に入るのは、ぱたり、ぱたりと、雨粒が窓ガラスに当たる音と、彼の吐息。
「……眠ってる……?」
 小声でつぶやくと、すぐ隣で横になっていた彼の短髪が少し動いた。
「…んー……寝てないよ」
 タオルケットの中から顔を上げて、少し気の強そうな瞳で私を見つめた。
 手を伸ばして、私の髪を指先にからませて遊ぶ。
「……あのときも、こんな感じの雨だったね」
 私は窓の外に目をやりながら、彼に話しかけた。
「ん……?」
「初めて、会ったときのこと。憶えてない?」
 地下鉄の出口で、雨に降られて困っていた私に声をかけたのが彼だった。
「憶えてるよ」
「……いつも、あんなふうに女の子に声かけるの?」
「そんなことないよ。あんなふうに声かけたの、恵麻が初めてだもん」
 少しむっとしたように反論する。
「だって、『傘、よかったら使ってください』だなんて…他にも人いたのに、どうしてわたしだったの?」
 と聞くと、彼は少し考えるような表情をしてから答えた。
「なんとなく……恵麻を見たときに、失くしてたものを見つけたような、そんな感じがしたんだ」
「失くしたもの?」
「うん。……ずーっと探してたけど見つからなくて、でもそのあと失くしたことも忘れちゃったものが、ふっと出てきたような。そんな感じ。……わかる?」
 言葉をひとつひとつ探しながら口にするような表情が、とてもいとおしい。
「うん、わかるよ。……遼」
「ん?」
「…愛してる」
 私の言葉を聞いて、遼は穏やかに微笑む。
「オレもだよ」



 私たちはまた、恋をはじめた。
 きっとこれは、ずっと前からの約束だったんだと思う。
 私は遼の腕の中に引き寄せられながら、ゆっくりと目を閉じた。



END


パチパチあるととってもうれしいです。感想やコメントもお気軽に残してくださいね。(イラスト出ます)

2004/05/15