Man and Woman

エキセントリック

02.

 

 部屋に入ってすぐに唇を重ねた。
 彼の手が服の上から身体をまさぐる。
「ん……まって、シャワーしたい」
「一緒に入ろう、風呂」
「うん、まあ、いいけど」
 と曖昧に返事をすると、彼は少し笑った。
 一般の家より広いバスルームにはジェットバスがついていて、その浴槽にお湯を溜めていく。
 脱衣所で服を脱いで下着だけになった私の後ろから、叶野さんがそっと肩を撫でて唇を当てた。
「つむぎ……好きだよ」
 耳元で囁いて、肩を撫でていた手が胸元に伸びる。
 胸のふくらみを手で包んでゆっくりと揉まれると、
「んん……」
 と声が出てしまう。
「気持ちいい?」
 耳たぶをねっとりと舐めながら吐息交じりに囁く。
「ん」
 彼は私の腰やおなかを撫でながら徐々に手を下に伸ばして、ショーツの上からおしりを撫でまわす。
「あ……、お風呂、入ろう?」
「うん」
 背中にぴったりとついていた彼の身体が離れて、そして私はためらうことなく下着を脱いで裸になった。
 肩までの髪を洗面台に置いてあったアメニティセットの髪ゴムで結んでからバスルームに入ると、先に彼が入浴剤を入れていたらしく、浴槽はあふれんばかりの泡で満たされている。
「いいにおい」
 甘いフルーツのような香りが充満しているバスルームで、まずはシャワーで身体を流してから、浴槽に入った。
 向かい合わせになって浴槽に身体を沈めると、彼の手が肌に触れてするすると胸元を撫でていく。
 泡の中に沈んでいるけれど、もう何度も抱き合っている私の身体のことはわかっているとでもいうように、彼の指先は胸の先端を探り当てて摘み、爪の先で軽く引っかく。
「あ……っ……」
 反対の手で私を引き寄せて、その手は腰から脚の間へと滑っていく。
 私は少し脚を開いて彼の指がその中に入ってくるのを待った。
「ぬるぬるしてる……」
 そこが水とは違う感触があるのは自分でもわかった。
「うん……ほしいの、中に……」
 彼の肩に腕を回して身体を密着させて、口元を近づけた。
 彼は私の脚の間で指を前後にゆっくりと滑らせるように動かして、私を溶かす。
「ここの、中?」
「そう……いっぱいに、して」
 私はそう囁いて彼の唇を舐めた。
 彼はその私の舌を貪るように舌で絡めとって唇を重ねる。
「ふ、んん…っ……」
 彼の指が割れ目にねじ込まれて声が漏れる。
 興奮してきたらしい彼の指の動きが強くなって、浴槽の水面が揺れて泡が飛ぶ。
 私は少し暑くなってきたからお湯から出て、泡まみれの身体のまま浴槽の縁に座って足を開く。
「つむぎ、めっちゃエロい」
「そういうの、好きでしょ?」
 彼は返事はしないでそのまま私の脚の間に顔を埋めた。
「あ……!」
 そこを舐め回して音を立てて吸いつく。
 浴槽の縁からずり落ちそうになるのを堪えた。
 膝がガクガクと震えてくる。
「も、だめぇ……」
「ああ、もう、挿れたい」
 口はそこから離さないでせつなげな声を上げる。
「ゴムしないとだめ」
「取ってくる」
 彼は一旦浴槽から出て、洗面台にあるはずのコンドームを取りに出て行く。
 私は小さくため息をついて、冷たい壁にもたれかかった。
 すぐに戻ってきた彼が自分に準備をして、浴槽に入ってきて性急に身体を重ねる。
「んん……あ……」
「ああ……すっげー気持ちいい」
 私の腰を強く抱き寄せて揺すりながら、自分の腰を打ちつける。
 お風呂のお湯がじゃぶじゃぶと音を立てて波立った。
「あっ……あぁんっ……」
 バスルームに自分の甘えたような声が響くのを聴いて、私は少し声を大きくして喘ぐ。
「あっ、あっ、すごい……いいっ……」
 こういう声や言葉で彼が一層興奮するのを知ってる。
「あーダメだ、いきそう……ベッド行こう、つむぎ」
 と言いながら腰の動きは止まらない。
「んっ、んっ、も、無理……」
 私はまた浴槽の中へと身体を動かすと、そのままふたりともお湯の中に入ってしまう。
 彼の上にまたがるような形でお湯の中で腰を揺すった。
「ほらぁ……も、止まんない…っ……」
 ちゃぷちゃぷとお湯が跳ねる。
「つむぎっ……それヤバい……」
「あぁん、いっちゃう! いくぅ…っ……!」
 彼と繋がっている部分がびくびくと震えて、身体が一瞬強張ったあとに力が抜けて行く。
「あ、ヤバいヤバい…っ……すっげー気持ちいい」
「はぁ……ベッドに、連れてって」
「一回出よう」
 身体を離して立ち上がる。
 先に彼がシャワーで泡を流して、私も自分でシャワーを浴びた。
 大きなバスタオルで身体を包んで、髪をまとめていたゴムを取りながら部屋に入る。
 叶野さんは私を抱き寄せてバスタオルをはぎ取り、ベッドに押し倒した。
「すっげーかわいい」
 確かめるように脚の間をまさぐり指を出し入れする。
「んん……」
 荒々しく唇を重ねて舌を絡ませた。
「んっ……ぅんん…っ……!」
 二度目の絶頂は簡単に訪れる。
「っあぁ……あ……!」
 唇を離すと口の端から唾液がこぼれた。
 まだ身体が落ち着くことのないまま、彼と深く繋がって突き上げられる。
「あぁ…っ……あっ、あっ、あっ……」
 彼の肩にしがみついて、律動に合わせて声を上げた。
 ベッドが揺れてギシギシと音を立てている。
 ふとなんの脈絡もなく、朝のイヤホンの彼が思い浮かんだ。
「ね、どこに出したらいい?」
「ん、叶野さんの好きなとこで、いいよ」
「マジで? 口、とか?」
 はあはあと荒い息をして彼は私を見下ろす。
「いいよ」
 そう返事をしたら、彼の動きが一層激しくなったように感じた。
「ああ、もう、一緒にいこう…っ……あーいくっ……!」
 その瞬間身体が離れて、そして口元に熱いものを当てられる。
「あ……」
 口を開けるとどろっとした液体が飛ぶように入ってくる。
「あー……ヤバいそれ、エロい」
 口の中のその白濁した液体を彼に少し見せるようにしてから、口を閉じて飲み込んだ。
 苦いような、食べ物にはあまりない味が口の中に残る。
「水、飲みたい」
 余韻もそこそこに私は起き上がって、洗面所に行ってコップに水を注いだ。
 ふと顔を上げると裸の自分が映っている。
 胸の先端のあたりが少し紅い。
 コップの水を一気に飲み干して、手の甲で口元を拭って部屋に戻る。
「おいで」
「うん」
 ベッドに寝そべる彼の隣に腰を下ろすと、その腰を引き寄せられて彼の腕の中に包まれる。
「んー」
「つむぎヤバいな、エロくて」
 ベッドサイドにあったリモコンでテレビをつけると、大きな画面にアダルトビデオの映像が流れる。
 女の子の喘ぎ声がやけに大きく聞こえて、ボリュームを下げる。
「誰のせい?」
「俺か」
 と声をあげて笑う。
 付き合って二か月と少し、男の人と付き合うのもはじめてだったし、セックスをしたのも彼がはじめてだ。
 他の人がどんなふうにセックスをするのかなんて知らない。
 こうやってラブホテルに来た時に少しアダルトビデオを目にする機会ができたけど、そう違うこともないかなと思う。
 テレビの画面では、裸の男性と女性が絡まりあっている。
「もうすぐ時間?」
 時計を見ると『休憩時間』の二時間まであと三十分だ。
「そうだな、もう一回シャワーする?」
「うん、してくる」
 彼から身体を離してベッドから出て、バスルームに向かった。


 時間ギリギリに部屋を出て、手をつないでエレベーターに乗り込む。
「帰ったらテスト勉強しなくちゃ」
「マジ? 大学ってテストあんの?」
 叶野さんは高卒でアルバイトからはじめて、バーテンダーの資格を取って今のお店に就職したという話を聞いたことがある。
「あるよ。来週はテスト週間なの」
「へぇー、大変だな。バイトは?」
「行くよー。働きますよ」
「でもテストなら悪いから誘えないかな」
「そういうこと考えるんだ? 叶野さん」
「一応なー」
 アルバイトのある日にいつもこうやって逢っているわけじゃない。
 週に一回あるかどうかだ。
 休みの日に逢ったこともなかった。
 エレベーターが一階に着いて扉が開く。
 フロントには誰もいないはずだけど、今日は珍しく人がいて何か作業をしているようだった。
 特に客の応対をしたりするホテルじゃない。
 だけど特に興味があるわけではないから、そちらを見もしないでそのまま通り過ぎるつもりだった。
「……あ」
 視界の端に見えたのは、朝のイヤホンの彼のようだった。
「え?」
 私の声に叶野さんが反応する。
「ううん、ごめん、なんでもない」
 私は振り返って確かめることもしないで、叶野さんと手を繋いだまま外に出た。