Man and Woman

OOPS!

06. キモチイイコト、イケナイコト。

 好きだけど、愛してるとはまだ、ちょっと違う。
 まだ、自分の気持ちをセーブしてる。
 それももうそろそろ、時間の問題かも。


 抱いて、と言ったくせに、上になってるのは莉音のほうで、ベッドに横になった僕の体に抱きついて何度もキスをくり返していた。
 ベランダから部屋に入ってすぐ、僕らは服を脱いで抱き合った。
 両親はまだ帰ってきそうにない。
 たぶん祖父の家にも寄るだろうから、遅くなるだろう。
 頭の片隅でそんなことを考えているうちに、莉音の指先が僕の胸元を滑っていく。
 ……それは立場が逆じゃないのか?
「ちょっ…待っ……」
 キスでさえぎられて言葉にならない。
 仕方がないからされるがままになってしまう。
 莉音は僕の耳元を唇と舌でなぞっていく。
 莉音の指は、僕の胸の辺りをゆっくりと撫でて、そのうち小さく突起した部分に指が触れた。
「んっ…ちょっ…そこは、ちょっと……」
 指先でゆっくり小さな円を描くように触れて、唇を這わせた。
「…どうだろ、ちょっとくすぐったいかも……」
「男の子って、ココは人によるよね。」
 ふふふ、と笑ってそのまま僕の首筋に唇を滑らせる。
 柔らかい唇と濡れた舌が、僕の体に触れていく。
 莉音に触れられることで、僕の体の一部分がだんだんと熱を帯びていくのだけど、されるばかりってのも男としてどうなのよ? とは思う。
 だけど、形勢を逆転できるような隙もなく。
「ね…触って……」
 莉音に言われて初めて、莉音の体に触れる。
 小さくはない胸のふくらみを手のひらで包むようにして、両手でゆっくりと揉む。
 もうすっかり見慣れたと思っていた莉音の体だけれど、触れるのはもちろん初めてだったし、触れてみて初めてわかる柔らかさとか弾力とか、そんなものが僕を刺激していく。
「は…あん……」
 胸を反らしてのけぞる莉音の体をもっと抱きたくて、体を起こす。
 背中に手を回すと、羽がぱたぱたと動く。
「…羽、しまえよ」
「んっ……」
 返事をしたと同時に、背中の羽が消える。
 莉音の喉元に口付けながら、背骨に沿って指先を滑らせる。
 胸元にキスをしていくと、僕の頭を抱きかかえるようにして、僕の髪に莉音の指が絡む。
「あっ…あん……」
 胸の先端を口に含んで、舌で転がすように舐める。
 もう片方の胸は指先で摘むように触れると、僕の動きに反応するように、莉音の体がぴくんと震えた。
「あ…っ……一真クン…気持ちいい……」
 いつもより少し鼻にかかったような甘い声でため息を漏らす。
 指先で弾くと、僕の髪に絡ませていた指に力が入る。
「あん…っ……」
 背中に回していた手を下に滑らせていく。
「あっ…あんっ……」
 おしりからゆっくりと中心に近づいた。
「…すごいことになってるんだけど」
 そこは十分に潤うどころか、僕のジーンズに小さな染みをつくっていた。
「ん…だって、気持ちイイんだもん……」
「まだ胸しか触ってなかったのに。」
 そこを指先でなぞって、少しずつ中へ侵入していく。
「あ…ん……やだ……」
 中でかき回すように指を動かすと、小さなしずくが僕の指を伝って腿に落ちていく。
「なんで?」
「あたしばっかり気持ちイイのってやだ……」
 と、僕の肩を押して、………また押し倒されるんですか?
 そして莉音の指は、まだはいたままだった僕のジーンズのフロントボタンにかかった。
「…していい?」
「……したいの?」
「うん」
 即答ですか。
「…脱いで」
「……うん」
 言われるがまま、ジーンズとトランクスを脱ぐ。
 莉音の舌がゆっくりとそこを上下に動いていく。
「……は……っ………」
 僕の体の一部を口の中に含みながら、髪をほどく。
 ぱらぱらと銀色の髪が落ちていくのを見ていた。
 ふと、莉音が髪をかき上げながら顔を上げて、僕と目が合った。
 ……あのときの瞳だ。
 赤い瞳が獣のように光る。
 ぞくり、とした。
 それは恐怖を感じたからではない。
 ……あのときの戸惑いも、きっと同じだ。
 かわいらしいタイプだと思っていたのに、そんな色っぽい顔もするなんて。
「…う…っく……」
 それを意識しだすと、なぜか余計に血液が一ヶ所に集まっていくような感じがした。
「一真クン…入れたくなってきた……」
 少し頬が上気している。
「ん……」
「入れても、いい?」
 顔を上げて口元を手の甲でぬぐった。
 些細なしぐさだけれど、そんなことも僕を興奮させていく。
「うん……」
 僕の返事を聞いてから、莉音は僕の体に跨り、ゆっくりと腰を落とした。


「はっ…あん……」
 滴り落ちそうなほどに濡れた莉音のそこは、熱くて柔らかくて、そしてきつく僕を締めつけてくる。
「一真クン…すごい、イイ……」
 目を閉じて、ため息をつきながら声を漏らす。
 次に目を開けたときには、また、あの瞳。
 そしてゆっくりと腰を前後に揺らしだした。
「あ…っ…ああ…ん…っ……」
 莉音の胸に手を伸ばして触れると、びくんと体が揺れる。
 先端の硬くなった部分を指で摘んで、弾く。
「やあ…んっ……」
「……莉音は、…ココ、気持ちイイんだ?」
「うん…っ……」
 僕は指先だけが触れるようにしながら、下のほうに手を動かしていく。
 そして、僕の体とつながっている部分より少しだけ前の方を指先で触れた。
「ああんっ……」
 びくん、と莉音の体が震える。
「…ココも、いい?」
「んっ…気持ちイイよ…そこ、気持ちイイの…っ……」
 髪をかき上げながら、小さく叫ぶような声に変わっていく。
「一真クンっ…どうしよ…っ……止まんないよ……っ…」
 体の動きが速く、力が入っていくのがわかる。
 それと同時に、僕とつながっている部分の締めつけが強くなっていく。
「…っ…莉音……すごい、締まる…っ……」
「あっ…やだ…いっちゃうかも…っ……」
 首を横に振りながら、それでも体の動きは止まることはない。
「いって、いいよ…」
「やだっ…こわいよ…やっ…あ…っ……」
「怖くないよ…莉音…っ…」
「あっあっ…やっ…いく…いっちゃうっ……!」
 莉音の上体が一度大きく跳ねたあと、僕の体に倒れこむ。
「っく……」
 断続的に強く締めつけられて、思わず声が漏れる。
 ここで僕までいくわけにはいかないだろう。
 ……さすがに、マグロな男はどうかと思うし。


「…あ……はあ…っ……」
 息を切らしている莉音の体を起こしながら、僕も上半身を起こす。
 向かい合うようにして抱き合いながら、また唇を重ねあった。
 何度も角度を変えて、舌を絡ませる。
 どちらのものとも言えないだ液があごを伝って莉音の白い胸元に落ちた。
 それを追うように、莉音の胸を舐めていく。
 その間もずっと、手で莉音の腰を揺すり、僕自身も下から突き上げるように動いた。
「あっ…あっ……一真クン…一真クンっ……」
 腕を僕の首に絡ませて、うわごとのように僕の名前を呼ぶ。
「莉音…まだだ……まだだよ…」
「うん…っ…もっと、もっと欲しいよ…っ……」
 それでもまた莉音の限界が近づいてきているようだった。
 ふたりの体を入れ替えて、莉音をベッドに寝かす。
 シーツに銀色の髪が広がって、薄暗い部屋の中でも輝いて見えた。
 本能のままに腰を動かし、唇を求め合う。
 汗だけのせいではない、濡れた肌がぶつかる音と、ふたりの動きに合わせてベッドがきしむ音。
 そして、莉音の切なげなあえぎ声が部屋に響く。
「一真クン…一真クン…っ……あたし、壊れちゃう…っ……」
「いいよ、もう一回いきなよ。」
「やっ…ダメっ…もうダメ…っ…あんっ…あっ…ああ…っ……!」
「莉音…莉音…っ……は…っ……」
 莉音の声が小さな叫び声になったと同時に、僕を激しく締め上げる。
 僕の方ももう限界だった。
 一瞬頭の中が真っ白になって、莉音の中に吐き出せるだけのものをすべて出しきった。

 ぐったりとしている莉音の髪を撫でた。
 人間の女の子と違って、角が少し邪魔だったけれど。
「…一真クン、上手だね」
「そうか? 普通じゃないかな」
 上手と言われるほど、経験豊富ではないし。
 ていうか、ほとんど莉音が主導権握ってて、ちょっとイマイチだったかなとか思うくらいだけど。
「このところ、初めての子ばっかり相手にしてたからかなあ」
 と、笑う。
「何か違うのか?」
「ん、あたしは、こうやってセックスすることで、一真クンたちがごはん食べるみたいに、栄養もらうんだけど」
「ああ、前に言ってたな」
「ドーテーくんのほうが栄養がいいのよ。…ほら、生贄ってたいていバージンでしょ?それとおんなじよ」
「へえー……」
「そんな子だと、やっぱりあんまり上手じゃないし、あたしより先にいっちゃうし。ちゃんといっちゃうくらいのってちょっと久しぶり」
「……怖かった?」
 さっきの莉音の言葉を思い出した。
「少し。なんか、いっちゃうときって、何か別の生き物になっちゃうような感じしない?」
 それは、少しわかるような気がする。
 特に、…僕の勝手な想像だけど、莉音は悪魔のくせにわりと理性的な部分もある。
 そういうのが吹っ飛ぶような感覚が、怖いと思うのかもしれない。
「…悪魔にも怖いものがあるんだな」
「あるよー。ていうか、今回のはひさしぶりだったからだけど!」
 ぷっとふくれて強がる顔が、かわいいと思った。
「………一真クン」
「うん?」
「さっき、…初めて、ちゃんと莉音って呼んでくれたね」
 ……そういえば、セックスの最中はけっこう名前呼んでたかも。
「…そうだな」
「ホントは、聞こえてたんだ。…あたしが外にいたとき、おうちの中であたしを探してくれてたでしょ?」
「…ああ」
「そのとき、莉音って呼んでくれたよね」
「…そうだな」
 そのときのことか。
「…うれしかったんだ」
 ふふふ、と笑って、そっと僕の手を握る。
 白く細い指先には、きれいに整えられた長い爪。
 その手を握り返してみる。
 僕は、莉音のことが好き?
 ……好き、だと思う。
 でも、人間じゃないし。
 悪魔とこういう関係を持ってしまうのは、たぶんきっとよくない、と思う。
 そんなこともわかってる。
 だいたい、気まぐれな性格の持ち主が相手だ。
 いつかは、離れるときが来るんだ。
 それでも、今は莉音のことを好きになっている。

「……一真クン」
 指を僕の指に絡ませながら、莉音がまた話し出した。
「何?」
「…パパさんとママさん、遅いの?」
「ああ、たぶんまだ帰ってこないんじゃないかな」
「真子ちゃんは?」
「今日は彼氏の家に行くって言ってたし、…泊りかもなあ」
 僕の返事を聞いて、くすっと笑った。
「…じゃあ、もう少しふたりっきりだね」
「……うん?」
「さて」
 と、体を起こして、僕の頬に触れる。
「……もう一回、しよっか」
 唇が触れあう寸前でささやく。
「………は?」
 僕の返事を待つこともなく、唇が重ねられた。
 ………さっきまでめそめそ泣いてたヤツ、誰だっけ……?


 神様、僕の体力はどれだけ残るでしょうか……。