Man and Woman

satisfaction moment

02. 新しい扉を開いて

「あ……」
 ほら、こんなかわいい声を出すなんて、私のほかに誰が知っているだろう?
「こんなふうに……女の子に好き勝手に触られて……それで興奮するなんて」
 哲弥さんの首筋から唇を滑らせて小さな乳首を舌先で舐めると、吐息を漏らす。
 指先で、手のひらで、彼の熱くなった場所を撫でまわすと、どんどん熱く大きくなっていくように思えた。
「うん……すごく興奮してる」
 これから、この熱が私の奥深くに埋められるのを想像して、私のその場所が彼と同じように熱を持ちはじめる。
「知らなかったよ……哲弥さんって、こんなこと好きだったんだ」
「そう……もっと、ほのかに……責められたいんだ……」
 その掠れた声に、せつない表情に。
 もっと、もっと……と私の深いところにある何かがむくむくと膨れ上がる。
 束縛されて興奮している彼の姿に、私はこんなにも熱くなっている。
 自分でも驚きだ。
「やだ……哲弥さんって変態……」
 私がそう言うと、すごく満足そうな表情を浮かべる。
「ね、もうベッドに行こうよ。わたしだって気持ちよくなりたいよ。……気持ちよく、して?」
 と、私はもう我慢できずに、彼の手首のベルトを外しにかかった。
 こんなにすぐにこれを外してしまうのは、使い方としてはあまり有効に使えていないのかもしれないけど。
 初めての拘束プレイとしてはこの程度でいいんじゃないかな、とも少し思った。
 いつかまた次があれば、この道具も使いこなすようになるのかしら?
 ……それはいいのか悪いのか。
 私が小さく首を傾げると、彼は少し笑った。
「喜んで」
 小さな金具がカチャカチャと音を立てながら、四つのベルトを外す。
 その間にも何度もキスをして、肌蹴てしまっていたワイシャツを脱いでベッドに座った彼の膝上に私が跨るような格好になった。
「ね……触って……」
 彼の手を取って胸の膨らみに押し当てると、両手でそこを掴むようにして揉みはじめる。
「ああ……ん……」
 お互いに舌を出して舐め合うようにキスをして、彼の唇が私の耳元に移る。
 ゆっくりと耳たぶを食んで舐めて、首筋を通って胸元へと滑り下りていく。
「はあ……っ……」
 ブラの上辺をめくって露わになったその先端を口に含まれたら、私の声は少し大きくなってしまう。
 私の背中や腰を撫でていた彼の手がするりとお尻を撫でた。
「Tバックなんだ?」
「そう……こういうの、好きでしょ?」
 彼の好みを考えて、この時間のためだけに用意したランジェリー。
 気に入ってもらえたみたいでうれしい。
「うん、すごくいいね」
 後ろの小さな布地に沿って指先が下がっていく。
 私は少し腰を浮かせて、彼の指がもっと奥へと進みやすいようにした。
「んん……っあ……」
「ああ……ほのかも興奮してたんだ? こんなにとろとろになって……」
「ん……そう……哲弥さんが、えっちな顔してたから…ぁ……」
「男が感じてる顔に興奮するんだね……うれしいな」
 と、彼は少し笑って、私の背中を抱き寄せて胸元にしゃぶりついた。
「はあぁ……っ……」
 今までもう何度もこうやって抱き合っているけど、今までで一番激しい。
 この後どうなっちゃうんだろう? って少し心配になるけど、そんな心配はすぐに頭の片隅へと追いやられて、そして消えてしまう。
「ね、舐めさせて」
「え?」
「僕の顔の上に、跨って」
「え……それ、恥ずかしい……」
 以前にもさせられたことはあるけど。
 その時はどちらかと言えば恥ずかしい気持ちの方が勝ってしまって、快感とまではならなかった。
 ……でも、今ならどうだろう? そんなふうに考える私も、どうかしてる。
「お願い」
「……うん……」
 渋々、そう返事をしたら、すごく嬉しそうな笑顔で、彼は仰向けに寝転がる。
 そして私はその彼の顔の上に脚を開いて跨った。
「や……ああっ……!」
 腿を強く抱き抱えられて、彼の顔にそこを押し付ける格好になる。
 薄いショーツの布地越しに彼の舌が動き回るのがわかる。
「もっと、押し付けて……擦って……」
 その囁きは私を狂わせる。
 見下ろすと彼の瞳が私を見つめている。
「あっ…あ……気持ちいい…っ……」
 言われるがままにそこを彼の口元に押し付け、腰を揺する。
 ショーツの脇から彼の舌が中に入って、直にそこを舐め回された。
「あっあっあっ……だめぇ…っ……いっちゃう! いっちゃうよぉ!」
 私は叫び声に近い声を上げながらも、腰の動きは止められない。
 瞬間、身体が跳ね上がり、何度も弾ける。
 身体の力は抜けてしまうけど、そのまま腰を落としてしまうわけにもいかず。
 ベッドに手をついて四つん這いのような格好になって、脚の間にいる彼を見下ろした。
「やだぁ……もう……哲弥さんの変態……」
「それ褒め言葉でしょ?」
 と笑うその吐息が当たるだけでも、私の身体はびくんと反応してしまう。
「ほら、見てよ。こんなにほのかを欲しがってる」
 そう言われて、何を指して言っているのかはすぐにわかった。
 振り向いた先には、彼の言葉通りに私に向かって伸びているかのような熱を帯びた彼自身が見えた。
「あ……」
 私に触られて、私に触って、味わったことでこんなふうになっているのなら、それはとても愛しく思える。
 身体の位置をずらして、そこに手を伸ばした。
「あ……ほのか……」
 今度は彼が声を漏らす。
 私はそこを軽く握って上下に擦ってあげる。
「ああ……ダメだ……ほのかの中で、いかせて……」
「んん……もう?」
 指先でそこをするすると撫でると、ぴくんと身体を震わせた。
「あっ……ほのか、焦らしプレイは、もう……次の時に」
 彼は苦笑いを浮かべてらベッドサイドに置いてあったコンドームを手に取り、すぐにその袋を破り開ける。
 その間に私はブラとショーツを脱いだ。
 彼が身体を起こして手早く準備をすると、私を抱き寄せてそこの上に跨らせた。
 私は彼に導かれるまま、今彼の身体の中で一番体温が上がっているところへと腰を下ろしていく。
「あ……はあぁ…っ……」
 異物が身体の中へと入り込む圧迫感があるけれど、それ以上に自分の身体の足りないところを埋められたような充足感で震えるほど。
 ずっとずっとこれを待ってた、と言ってもいいくらい。
「ああ……ほのか……気持ちいいように、動いて……僕で、いって……」
 その言葉に、私は唾を小さく飲み込んでから、腰を前後に揺らしはじめた。
「これで、いい……?」
 騎乗位の動き方もいくつかあるだろうけど、私は前後に揺するのが一番気持ちよく思える。
「あん……哲弥さんが、中で動いてる……」
 彼の首に腕を絡ませて、本能のままに腰を打ち付ける。
「ほのか……ああ……」
 彼は今まではこんなふうに喘ぎ声を出すことはなかったけど、その声が私を一層絶頂へと押し進める。
「哲弥さん……わたしの中、気持ちいい……?」
「気持ちいいよ……ほのかの中で擦れて……ああ……」
 苦しそうに眉を寄せて、でもどこか嬉しそうな表情の彼に口づける。
「もっと、気持ちよくなって……わたしで……もっと……」
 キスをしながら彼はゆっくりと後ろに倒れ、私は上下に身体を揺すった。
「あ……ほのか……!」
 我慢できない、とでも言うかのように彼が下から私を突き上げる。
「や……あ……ああっ……!」
 その激しさに思わず声が大きくなる。
「あっあっ……だめぇ……っ……また、いっちゃう……」
「ああ……ほのか……いくよ……いく……っ……!」
「ああっ……!」
 何度も深く突き立てられて、絶頂を迎える。
 その瞬間、頭の中が真っ白になって、ただ彼と結びついた部分が彼を絞り尽くすように収縮するのを感じていた。
 ふらりと意識が遠のいて彼の胸に倒れこむ。
 そんな私の髪を彼の指がゆったりとといていく。
「……ほのか?」
「ん……」
「良かった、気を失ったかと思った」
「ん、気を失うかと思った……」
 今までのセックスだって気持ちよかったし、絶頂に達したことだって何度もある。
 だけどここまでになることはあっただろうか、とまだぼんやりとした頭で考える。
「すごく、気持ちよかったよ。ほのかならきっといいだろうなって思った」
 彼は私と身体を入れ替えるようにして起き上がり、私の中から彼自身を引き抜いた。
「あん……あ、なんかそれって、わたしがえっちみたいじゃない?」
 後始末をしてベッドに戻った彼を見上げる。
 彼は私のすぐ隣に横になって、私を抱き寄せた。
「そうだろ?」
「うーん……どうだろ」
 そんなつもりはなかったんだけど……でも今さっきまでの自分を思い返すと、……ちょっと不安になる。
「だめかなぁ?」
 哲弥さんに向かってそう言うと、彼はとてもやさしい笑顔を見せた。
「いいから、こうやって付き合ってるんだろ?」
 ふわりと髪を撫でる彼の指が気持ちいい。
「そう……そうなのね。大丈夫ならいいんだけど……」
 そんな心配も少しありながらも、彼の腕の中で髪や身体をゆっくりとやさしく撫でていられると、さっきまでの激しいセックスの余韻と疲れのせいもあって、ふわふわとした眠気が私を支配していく。
 私はそれには抗わずに目を閉じて、意識を手放した。



 頭をやさしく撫でる彼の手の感触で目が覚めた。
 部屋の中は暗く、何時頃なのか見当もつかない。
「おはよ……朝なの?」
「おはよう。一応、七時過ぎた頃」
「そっか……ちょっと早いね?」
 休みの日はもう少し寝ていたい。
 昨夜のセックスがあんなだったせいもあって、まだ瞼が重い。
 ……そう、あんなことをしたのは夢だったんじゃないかと思う。
 だけど、目を開けて視界に入ったあの拘束具が昨夜のことを鮮明に思い出させた。
「まだ眠い?」
 ゆったりとした動きで私の髪を撫でながら、彼は少し笑ったようだった。
「ん……だって、」
 と言いかけて、やっぱり口をつぐんだ。
「だって?」
 あんなに激しいなんて。……そんなこと、言うのはやっぱり恥ずかしい。
「……なんでもない……」
 私がそう言って枕に顔をうずめると、彼は少し笑った。
「チェックアウトはゆっくりでも大丈夫だから、もう少し寝てもいいよ。僕も一回目が覚めたけど、まだベッドにいたいし」
「ん、じゃあ、そうする……」
 返事をしてほどなく、私は眠気に襲われるがままに眠りに落ちた。


 結局、チェックアウトの時間ぎりぎりにバタバタと身支度をして外に出た。
「こんなにいい天気だったなんて」
 車に乗って地下駐車場から出てはじめて、今日が快晴だったことを知る。
 ラブホテルってカーテンは完全遮光だったりする所が多いし、今回に至っては窓にフィルムが貼ってあるタイプの部屋で、外の世界とは全く遮断されていた感覚。
 その分、世界にふたりきりみたいな気分に浸れて、行為にも没頭できると言えば悪くないんだろうけど。
「このままどこかに行こうか」
「大丈夫なの?」
「うん、特に何も予定はないし、何よりほのかと一緒にいたい」
 と、彼は私の右手を握る。
 きゅんと甘酸っぱいような感覚が胸の奥に広がって、この人が好きだって思える。
「うれしい。私も、だよ」
 そう言うと、少し照れたような笑顔を見せる、そんな表情も好き。
 恋人としてつきあって半年、ちょっとしたケンカもするけれど、とても満たされた気分にしてくれる人。