Man and Woman

satisfaction moment

06. サプライズ!

 次の日、眠れないまま彼と会う約束のためにシャワーを浴びてメイクをする。
 鏡に映る自分は疲れた顔をしている。
 それもそうだ、寝てないもの。
 でも、私の思い違いかもしれない。
 そうだったらいいな。
 そうだよ、きっと。
 自分にそう言い聞かせながら、彼のマンションに向かった。



 マンションの前でまず彼にメッセージを送ってから、エントランスに入ってエレベーターに乗り込む。
 彼の部屋がある六階のボタンを押して、少し壁に寄り掛かった。
 いつもよりも緊張感があるのは、やっぱり昨日のせいだと思う。
 エレベーターの扉がゆっくりと開いてその箱から一歩外に出る。
 何度も来たことのあるドアの前でひとつ深呼吸をしてから、インターホンのチャイムを鳴らした。
『はい、どうぞ』
 すぐに彼の声が聞こえたから、ドアに手をかけると鍵はかかっていなくて、ガチャリと金属音を立ててドアが開いた。
「おじゃまします」
 ドアの中に入ると、彼が玄関まで来て出迎えてくれる。
「おはよう、あれ、なんか元気ない顔」
 開口一番、彼にはすぐにわかってしまう。
 でもそれは仕事のせいだと思うだろう。
「んん、ちょっと、ね」
「そっか、呼び立てて悪かったかな」
「ううん、いいの」
「まあ、遠出するとかよりは、いいか」
「うん」
「そろそろかなって思って、コーヒー淹れたんだ。飲む?」
「うん、いただきます」
 私はワンルームの中央に置かれたソファに腰を下ろして、キッチンに立つ彼に笑いかける私の表情は、普段と同じにできていると思う。
 前に来た時と変わるところはないワンルームの部屋は、彼が就職した時から住んでいると聞いた。
「仕事どう? 昨日の会議で済んだ?」
「うん、月曜日までにってものは昨日のうちに終わって……」
 昨日と言えば、私の頭の中には昨日のデパートでの光景が浮かんでくる。
「……お昼過ぎに終わって、それから、デパートに行ったの。……大丸に」
「うん」
 昨日彼を見かけたデパートの名前を出しても、彼の顔色は変わらなかった。
「そしたら、……哲弥さん」
「え、……あ、嘘」
 彼は目をパチパチと瞬かせて、驚いた顔をした。
「哲弥さん、見かけて……でも……」
 私はどんどんとうつむいていってしまう。
「なんだ、声かけてくれれば」
「だって、……だって、女の人と……」
「あ……ああー、見ちゃったか」
 ため息混じりに呟く。
「見ちゃったって……だって、あんな……あんなとこで、女の人といるなんて……声なんて」
「まあ、そうか。……でも、それは」
「わたし……わたしのことは、……本気じゃないのかなって……」
「えっ、マジで? そこまで考えちゃった?」
 思いのほか軽い調子の反応に温度差を感じて、彼が遠くなってしまったのかなと思う。
「だって……だって……」
「マジか。……うーん、誤解されるようなことになるのかな。それなら、申し訳ない」
「……誤解、なの……?」
 顔を上げて彼を見ると、まっすぐに私を見て微笑む。
「誤解誤解。あの人は大学の同期で、あそこのフロアマネージャーやってて。それでちょっと相談に乗ってもらってたんだ」
「相談?」
「女の子が喜ぶような指輪ってどんなかって、教えてもらったけど。結局は本人の好みをちゃんと聞いて選んだ方がいいって言われて」
「指輪……?」
「そう。そこはサプライズはいらないって言われたんだけど……違う意味でサプライズになっちゃったみたいだな」
 と、彼は私の左手を取って、そっと撫でる。
「え……」
「だから、彼女のことは全くの誤解で。ほのかに似合う指輪をあげたいから、今度一緒に行こう。なんだったら今日でもいいくらい」
「え?」
 まさか、……昨日から朝まで考えていた『まさか』とは全然違う方向で、思ってもいなかった話になっている。
「ほのか。結婚しよう。……結婚、してください」
 まっすぐに私を見つめる瞳から目が離せない。
 だけど今現在驚いていることは確かだから、
「えっ……えええ?」
 という声しか出ない。
「まさかこんな、家でプロポーズするつもりじゃなかったんだけどな。もっとロマンティックにしたかったなぁ」
 小さくため息をついて、苦笑いを浮かべる。
「ええー……ほんとに……?」
「ほんとに、僕はほのかと結婚したいです」
 付き合ってまだ半年。
 でも、程よい距離感で付き合ってきたように思う。
 少しおっとりとしていて誰にでも相手を尊重する態度は気持ちよく付き合うことができるし、私自身もそうなりたいと思える、尊敬のできる人。
「わたし……でいいの?」
 まだ私は自分自身に自信が持てない。
 だからこんなふうに確認してしまうけど。
「もちろん。ほのかがいい。ほのかしかいない」
 まっすぐに瞳を見つめてそう言われたら、素直に聞き入れることができる。
「あ……わたしも、哲弥さんと、……結婚、したいです」
「ありがとう、ほのか。本当に大切にするから」
 重ねた左手を引いて私を抱きしめる。
 暖かく包まれて、幸せな気持ちで満たされる。
「うん」
「だからそんなヤキモチ妬かないで」
「や、だって、だって……びっくりしちゃうじゃない……」
「まあ、その気持ちもわからないでもないか」
 私を抱きしめたまま髪を撫でる。
「うん、……ん……」
「ねえ、誤解も解けたところで」
 少し身体を離して顔を覗き込む。
「ん」
「誤解させるようなことをした僕に、……お仕置きしたくない?」
「あ、やだ……え……お、お仕置き、されたいの?」
 その言葉から一気に想像するそれは、子どもにするようなものではないわけで。
「ヤバい、それだけでもかなり来るんだけど……お仕置きされたいよ……お仕置きして?」
 そんな甘えた声で囁かれると、私の中どこかにあるスイッチが入ってしまう。
「……どう、されたいの?」
 ついさっきまではプロポーズの幸せな気持ちで満ち足りていたのに、一瞬で淫猥な想像で頭の中がいっぱいになってしまう。
 こんなふうになったのは彼のせいだ。
 これはお仕置きしなければいけないかも。
「ほのかの好きなように……なんでも言うこと聞くから」
「ほ、ほんとに? ……じゃあ、お仕置きだから……ひどいことしちゃうよ?」
 私をこんないやらしい女にしてしまった哲弥さんに、どうしたらお仕置きできるかな。
「なんでもする、から……」
 抱きしめあった姿勢のままでいたから、ジーンズ越しに触れる彼の股間が熱くなってきたのがわかる。
 そこに指で触れると、彼の身体がぴくりと反応した。
「あっ……ほのか……」
「もうこんなに、興奮しちゃったの?」
「ぅん……ん……あ…っ……」
 上下に擦るとかわいい声を上げる。
「ね、じゃあ、ベッドがいいな」
「うん、ベッド行こう」
 甘いため息をついて、私の手を握ってワンルームの奥側に置かれたスチールベッドのそばへ行く。
「じゃあ……手錠ってある?」
「あるよ」
「それ使おう」
 と言うと、彼は少し苦笑する。
「ほのかも、なかなかだなぁ」
「哲弥さんのせいだからね」
「そうなのかなぁ」
「ね、服脱いで」
「うん」
 私の言葉に素直に応じて、彼はボクサーショーツ一枚の格好になった。
 彼がクローゼットから出してきたふたつの手錠は、ひとつずつ彼の両手にはめて、その手をスチールベッドの頭側に固定する。
 彼のボクサーショーツの中は、さっきジーンズ越しに感じたとおりに熱く張り詰めているのがわかる。
 その彼をベッドから降りて見下ろすだけで、ぞくぞくする。
「痛くするのは、しないけど。手、痛くない?」
「うん、大丈夫」
「わたしに触れないよ?」
「ああ……触りたいよ」
「だめよ。触らせてあげないの」
 私は服を着たまま彼の股間の上にまたがる。
 ほんの少しだけスカートをまくり上げて、股間を触れ合わせるように腰を動かすと、堪らないと言うように彼がせつない声を上げる。
「あぁ……ほのか……」
「今日は、……いっちゃだめ。がまんしてね」
「うん……あ……むずかしいな」
「だめ、お仕置きなんだから」
 私は彼のおなかにまたがったまま、指先で胸元を撫でて小さな突起をなぞると、彼の身体がびくんと震える。
「ここ気持ちいい?」
「うん、あ……気持ちいい……」
「気持ちよくしてあげるね」
 指先でそこを摘んで捏ねると、女の子みたいに喘ぎ声をあげる。
「あっ……あ……」
「哲弥さん、かわいい」
 舌先で唇を舐めると、彼の舌が伸びて来て絡め取られる。
「ぅん……」
 彼の口の中に引き込まれてお互いを舐め合う。
 脳も身体もふわふわと高揚して快楽を求めることしか考えられない。
 もっと全部裸になって重なり合いたいと思うし、もっと彼が気持ちよくせつなく声を上げるのを見たいとも思う。
 唇を重ねたまま、ブラウスのボタンをひとつずつ外して胸元をはだけた。
 彼の手は手錠でベッドにくくりつけられているから、私に触れることはできない。
 ほんとうは触ってほしいけど。
「ああ、ほのか、きれいだ」
 ネイビーにピンクと白の刺繍が入ったランジェリーは清楚とセクシーの両方を兼ね備えているような気がして、彼が好みそうだと思って選んだ。
「さわりたい?」
「うん、触りたい……」
「どんなふうに?」
「両手で胸をいっぱい揉んで……乳首を摘んで捏ねたり……」
 私は自分の手で彼の言葉通りに胸の膨らみを揉む。
「こんなふうに? したいの?」
「あぁ……そう、めちゃくちゃに揉んで……」
「んん……」
 パッドが薄いブラは、上から揉みしだけば隠れていた先端が簡単に露わになる。
 きゅんと固くなったそこを彼が言うように摘んで捏ねた。
「はぁ…あ……」
「お願い……舐めたい……しゃぶらせて」
「ん、じゃあ、気持ちよくして」
 彼の顔に覆いかぶさるようにして身体を倒すと、舌を伸ばして乳首を舐めて口に含む。
「あっ、あ……あん……」
「は…あ……ほのか……」
 もうそんな刺激じゃ足りなくて、もっと彼の顔に胸元を押し付けて自分でも揉む。
「自分でもしちゃうの……ほのかはえっちだな」
「哲弥さんのせいだよ……こんなじゃなかったのに」
 今なんてもう、ショーツの中でも欲しくて欲しくて無意識のうちに彼の股間に擦り付けてる。
「もう、ほのかと離れられないんだ……」
「ん、……わたしも」
 一度立ち上がってスカートを脱ぎ捨てて、彼の顔にまたがる。
「こっちも、舐めて…あっ、ああっ!」
 言い終わらないうちに、ショーツの上から彼の舌が這い回りしゃぶりつくような音を立てる。
「あっ…いい…っ……気持ちいいっ……」
 思わず腰をより一層密着するように揺すると、彼も声を上げる。
「はぁっ……あ…ほのか……」
「あ…あ……どうしよ、わたし、おかしくなっちゃうっ……」
 まだ頭の片隅には小さな理性が残っているけど、身体はその言うことを聞かない。
 自分でショーツの脇のリボンをほどいて、とろとろに濡れた割れ目を指先で開いて彼に見せつける。
「いいよ、僕にだけ見せて……」
 彼の舌がそこを舐め回して蜜を吸うような音を立てた。
「あっ、あ、はあっ……!」
「おいしいよ、ほのか……これじゃご褒美だな」
 と少し笑う。
「んっ、でも、いいの……いいよぉ……」
 舌を伸ばして中まで舐められると、ぞくぞくと身体が震える。