Man and Woman

satisfaction moment

07. 満ち足りる瞬間

「も、だめ……」
 そのまま絶頂に達してしまいたい気持ちをかけらほど残っていた理性が止める。
 ……違う、もっともっと激しく狂おしいくらいの快楽を得るために、彼から身体を離した。
「あ、ほのか……もっと舐めさせて」
「今度はわたしが、気持ちよくしてあげる。……でも、いくのはがまんしてね」
 私は彼のボクサーショーツに触れた。
 その中にはもうこれ以上ないくらいに張りつめた彼自身が存在を主張している。
「ほら、もう濡らしちゃってる……」
 先端から滲み出した液体がボクサーショーツに小さな染みを作っている。
 そこを上下に擦るように指を動かすと、彼は
「あっ……はぁっ……」
 と堪えられないように喘ぎ声を上げた。
「脱がせていい?」
「うん……」
 ボクサーショーツを下ろすと、そこは体温よりもずっと熱くなってるようだった。
 その部分を彼と私の身体で挟むように、私が彼の上にまたがる。
「見て……」
「あ……ほのかに、ついてるみたいだ」
 まだ中には挿入らないようにしながらそこを私の股間にあて、先端を手で包むように握って撫でたり上下にこすったりすると、彼の身体がびくびくと震える。
「あっ、あっ……だめだよ、すごい……」
 手の動きはやめないまま、唇を重ねて舌を絡める。
 唾液を混ぜあって交換して、彼が吸いとって飲み込む。
 こんなキスもセックスも、他の誰かとなんて考えられない。
 こんなに性癖をさらけ出して、それをお互いに受け入れることができるのって、実はすごいことなんじゃないかって思う。
 私にとっては、哲弥さんしかいない。
「あっ、はぁっ、もうだめ、いっちゃう……!」
「だめぇ、がまんして……」
 根元のあたりで少し力を込めて動きを止める。
「ああ、お願い……」
 先端に透明な液体がひとしずく滲み出たのを私が舌先で舐めとると、彼の身体がぴくりと震えた。
 私は彼から手を離して、枕元に置いてあった手錠の鍵を取る。
「わたしのことも、気持ちよくして?」
 手錠を外した途端、強く抱き寄せられて思わず
「きゃ」
 と声が出た。
「ほのか……好きだ」
「わたしも」
「……こういう時の、えっちなほのかも好きだし、仕事してる時の真面目なほのかも好きだし」
「や、やだ急に」
「ほのかとこうやっていられて、マジで、しあわせ」
 抱きしめあっているから表情は見えないけれど、言葉の後半は少し照れながら、なんだか高校生みたいな言葉づかいで。
 私はつい笑ってしまう。
「ふふ」
「だから、ずっと一緒にいよう?」
「うん」
 少し身体を離して鼻をこすり合わせると吐息が唇をくすぐる。
「愛してる」
「わたしも、愛してる」
「……もっと、愛してもいい?」
「ん」
「めちゃくちゃになるまで」
 私が返事をするより前に唇が重なって言葉にならない。
 背中を抱いていた彼の手が身体をまさぐり、胸を強く揉みしだきながら指先で先端を摘む。
「ん、……あっ、はあっ……」
 反対の手が背中から腰を通っておしりを撫で回して強く揉む。
 その間もずっと舌を舐め合うようなキスは止まらない。
「んぅ……」
 無意識に腰をすり寄せると、熱く硬くなった彼自身に当たる。
 そこにもうずっとぬかるんだままの部分をこすりつける。
「あぁ……すごい、ぬるぬる……」
「ん……もう、挿れたい……ね、挿れてぇ……」
「うん、挿れてあげる……いっぱい突いてあげる」
 ベッドのそばの机の上には、最初からコンドームが用意されていたらしい。
 彼がそれに手を伸ばす。
「うん……いっぱい突いて」
 準備ができた彼の上にゆっくりと腰を落としていく。
「あ……ほのかの中に挿入ってく……あぁ……」
 きちきちと押し広げられるような圧迫感。
「気持ちいい……気持ちいいよぉ……」
 膝を立てて彼の膝の上に手をかけて少し後ろに体を預ける。
「見える……? わたしの中に哲弥さんが挿入ってるの」
「うん、すごい……全部見えてるよ」
 こんな大胆なことをしてしまうのも、哲弥さんとしかできない。絶対に。
 私は腰を上下に揺すって快楽をむさぼる。
「すごいの……奥まで届いてるの…っ……」
「ああ、それすごい…っ……ほのか……!」
「だめぇ、まだだめ……もっとほしいの……!」
 私の動きに合わせて彼が下から突き上げる。
 たぷたぷと水分をたっぷり含んだ音が部屋に響いている。
 彼の手がふたりの繋がっている部分に触って、私の小さな花芯を指先で潰すように触れたとき、急激に快楽の渦に巻き込まれてしまう。
「あっ、あっ、いっちゃう……いくぅ……!」
 私の身体はびくりと大きく跳ねて、それから自分の力で支えることができなくなる。
 背中は彼の膝が支えていてくれた。
 そのまま快楽の波に身を任せた。
「あ……あ……」
 彼と繋がっている部分が痙攣するようにびくびくと震えて、そのたびに彼自身がもっと大きくなるように感じる。
「……っ……ほのか、すっごい……締め付けてくる……」
 苦しそうに眉間を寄せるその顔がたまらない。
「もっと……もっとほしいのぉ……」
「もう我慢できない」
 彼は私を引き寄せて唇をむさぼりながら身体を入れ替えて、仰向けにさせられる。
「んんっ……あ…っ……あぁっ!」
 激しく突き上げられて、叫び声のような声を上げる。
 ベッドがぎしぎしと大きな音を立てるけど、そんなことも気にならないどころか、私たちふたりを絶頂に導くだけだ。
「ああ……ほのか、愛してる」
「わたしも…っ……わたしも、すき……哲弥さんっ……哲弥さん……」
 激しい抽送を繰り返し息も上がっている中で、うわごとのように彼を呼ぶ。
「ほのか……ああ、ほのか…っ……いくよ…出る…っ……!」
「あっ……あ……!」
 身体が震え、頭の中で火花が飛ぶような感覚に襲われる。
 彼が何度か強く腰を打ちつけてからゆっくりと動きを止めるまでの間、私の意識はゆっくりと混濁していった。



 そっと髪を撫でられる感触で、ふと目が覚めた。
「うわ……」
「どうした?」
「気、失ってたかも」
「マジで?」
 と彼は笑う。
「や、なんか……ちょっと恥ずかしい」
 裸でベッドに横たわったまま、手のひらで顔を覆う私の頭を彼はやさしく撫でる。
「今さら言う?」
「だって、こんなに……こんなの、あり得ない……」
「なに?」
「哲弥さんが、すっごい変態で……」
 そこで彼が吹き出して笑う。
「わたしは、そんなのじゃないって思ってたのに……こんな、ど変態になっちゃって」
「ど変態」
「だから、責任とって、……ずっと、相手してね?」
「もちろん、ずっと一緒だ。……僕の、女王様」